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介護事業所の従業員が、業務時間中に自転車を利用することについて

2015年05月19日

 利用者のご自宅にケアマネージャーさんやヘルパーさんが訪問する際に、自転車を使っている場合も多いかと思われます。  自転車による交通事故は、神奈川県内では、平成26年に6916件発生しているとのことです(神奈川県警察本部 交通部交通総務課公表の かながわの交通事故 平成26年より)。  ここで、介護事業所に勤めるAさんが、業務時間中、利用者宅への訪問するために自転車に乗っていたところ、Bさんに接触してしまい、Bさんを怪我をさせてしまった場合のことを考えます。  この場合、Aさん自身がBさんに対して損害賠償責任を負う場合(不法行為(民法709条)が成立する場合)、Aさんの雇用主である介護事

成年後見制度を利用するきっかけ

2015年04月29日

 成年後見制度を利用するきっかけは何でしょうか?  最高裁判所 事務総局家庭局が発表している成年後見関係事件の概況(平成25年1月から12月)によれば、申し立ての動機としては預貯金等の管理・解約が1位で、介護施設入所等(介護保険契約)が2位とされています。  相談に来られる方からも「本人名義の預貯金を解約しようと思ったら、金融機関から本人の同意が確認できないので断られた。」、「介護サービス事業者から、本人が認知症なので成年後見人をつけてほしいと言われた。」といったことも伺います。  預貯金の解約や、介護施設の入所などが必要になるときは、事態が切迫している場面も少なくないと思われます。  そ

介護サービス施設・事業所が弁護士と顧問契約を結ぶメリット

 介護サービス施設や事業所が弁護士と顧問契約を結ぶメリットは何でしょうか?  施設や事業所として問題が起きてしまい、相談をしなくてはいけないという場面は必ずしも多くないと考えられる方もいらっしゃいます。  ですが、施設や事業所で働いている方が、現場において介護に関する法律問題(例えば、成年後見制度)について悩むことはとても多いと相談を受けていると感じます。  そのように従業員の方がそういった問題に直面した場合には、従業員の方から直接相談いただくことも可能です。そして、そのような相談事例について施設内での勉強会などを通じて、その施設内で共有化することもできます。  また事業所や施設についてより

セカンドライフのために備えておくべきこと

2015年04月25日

 高齢者の方から相談を受けていると、今は元気だけれども、今後判断能力が落ちて来たり、自分で出来ないことが増えて来た時のことが心配、という方が多くいらっしゃいます。  そのような方が今から準備しておいた方が良いことについて、紹介したいと思います。  まず、ご自身に判断能力があるけれども、今の時点ですでに財産管理が心配という方の場合(例えば、以前に比べて判断能力が落ちていて、複雑な契約を行うことに不安があるなど)には、財産管理契約を結ぶことが考えられます。  例えば、ご親族や弁護士との間で、財産管理契約を締結し、預貯金や賃貸用不動産といった、財産の管理を任せるということが考えられます。  ご本

子どもに知的障害がある場合、親が亡くなった後の財産管理をどうするか

2015年04月22日

 お子さんに知的障害があり、成人後もご両親が財産管理をしているということもあります。  もし、ご両親が亡くなった場合、残されたお子さんの財産管理をどうするか、ということが気になる方も多いと思われます。  そのような場合に備えて、お子さんの障害の程度に応じて、取れる手段を説明します。  まず、お子さんの知的障害が軽度で、判断能力がある場合には、お子さん自身が第三者との間で財産管理を締結しておくことが考えられます。例えば、お子さんのご兄弟や、信頼できる第三者とお子さんとの間で財産管理契約を結んでおき、その方がお子さんのために、財産を管理するという内容です。  もっとも、この場合には財産管理が適正

相続対策のための成年後見制度の利用

2015年04月21日

 遺産分割に関する紛争についても、多くの案件を取り扱っていますが、最近多いのは相続人の一人が、被相続人の財産を管理していた場合、その管理態様について後から問題となる事案です。  例えば、Aさんという人がいて、その子どもB、Cがいたとします。  Bが同居をしてAさんの介護と財産を管理していたような場合に、Aさんが亡くなったあと、遺産分割手続きの際に、Cさんから「Bさんが勝手に財産を管理していた」、「Bさんの財産管理に不明な点がある(使途不明金がある)」といったことで、争いになってしまうこともあります。  実際には、BさんがAさんのためにきちんと管理していても、領収書などを保存していないことも

弁護士に相談するメリットは?

2015年04月20日

 今回は弁護士に遺言や成年後見について相談するメリットをお話しします。  弁護士は争いになった場面、裁判まで至ってしまった場面を多く経験していることから、そのような実際に経験した事例から、起こりうる問題を予測することもできます。  そして、問題が起こりうる場合には、問題が起こらないように、問題が起きたとしても最小限度になるように対策を一緒にとることも考えられます。  また、相談の結果、現時点では何も行わなくてよいと分かることもあります。  実際に、ご依頼を頂いた場合には、弁護士は依頼していただいた方の代理人として、活動を行うことができます。書類の収集だけでなく、書類作成や交渉なども代わって

成年後見制度の利用数はどれくらいなのか

2015年03月01日

成年後見制度(法定後見制度)という言葉を聞いたことがある方は多いと思いますが、実際にはどのくらいの数が運用されているのでしょうか。 最高裁判所事務総局 家庭局が公表している資料によれば、成年後見制度を利用している方々は、平成25年12月末時点で、「17万6564人」とのことです。平成22年12月の時点が「14万0309人」だったことに比べると3年で約3万6000人増加しているようです。制度の利用目的については、本人の預貯金解約や、施設入居といったことが多いようですね。 今後、ますます高齢化社会が進むことからすれば、成年後見制度の利用を必要とされる方は、より増えていくのではないでしょうか。実際、

成年後見人などはどのような人が就任するのか

成年後見(法定後見制度)を利用しようとする方が気になるのは、実際に成年後見人などにはどのような人が就任するのか、という点です。成年後見などの開始の審判を家庭裁判所に申し立てる際には、後見人などの候補者を裁判所に伝えることが出来ます。 例えば、夫が認知症になってしまったので妻が自分を後見人の候補者として申立をするような場合です。 ここで、成年後見人などになるために、特殊な資格は要求されていません。 なお、法律上は、①未成年者 ②家庭裁判所で免ぜられた法定代理人、保佐人又は補助人 ③破産者(復権をしていない人)、④被後見人に対して訴訟をし、またはした者、並びにその配偶者及び直系血族、⑤行方の知れな

成年後見人は何が出来るのか 

実際に成年後見人が選任された場合、成年後見人はどのような活動をするのでしょうか。 成年後見人が行う活動は、本人の財産管理と身上監護とされています。成年後見人には本人の財産に関する包括的な管理権と、財産に関する法律行為に関する包括的な代理権が与えられています。 まず、財産管理のためには本人の財産を把握する必要があります。そのため、本人、申立人その他親族から聴き取りなどを行い、本人の財産を把握し、預金通帳などの引き渡しを受けて管理をします。 その際、ご本人名義の預貯金があることが大半なので、各金融機関に成年後見人の届出を行います(金融機関ごとに形式が異なります)それと同様に、本人の有している財産に

保佐・補助について

保佐、補助制度については、ご存知でしょうか。 法定後見制度は成年後見(未成年後見)だけでなく、保佐、補助といったように本人の判断能力に応じて、適切なサポートが出来るように複数の制度が用意されています。 まず、保佐制度の概要について見ていきましょう。保佐人には重要な財産行為についての、同意権が与えられています。これは、一定の重要な財産上の行為(不動産の売買や、借財や保証行為など)を被保佐人が行うには、保佐人の同意が必要とされており、その同意を得ない場合には保佐人による取り消しが可能ということを意味しています。 また、保佐人には必要に応じて特定の法律行為について代理権を授与されることもあります(代

弁護士に相談するタイミングについて

弁護士にどの段階で相談するのがいいか、と聞かれることが多くあります(これは成年後見に関係する法律相談だけではないと思いますが)。 結論から言えば、不安を感じた時点でご相談いただいた方が良いと考えます。そうはいっても、特に高齢の方は弁護士に相談すること自体をためらわれる方が多いと感じますし、「法律相談をすると、そのまま弁護士に依頼をしなければいけないのではないかと思っていた」といった誤解をされている方もいらっしゃいます。 しかし、法律相談だけで問題が解決する場合もありますし、1回の相談では解決しなくても、継続的なアドバイスを受けることで解決することもあります。また、法律相談をしている中で、相談者