「遺産分割協議は口約束でもよいの??」
2023年06月02日
遺言がない、遺言で遺産の具体的な分け方が書かれていない場合、相続人同士で遺産の分割について話し合いをする必要があります。 この話し合いの結果に基づいて遺産を分けることになりますが、これを書面に残しておく必要はあるのでしょうか? 次のような場合を考えます。 Aさんが亡くなり、その相続人は子どものBさん、Cさんです。 Aさんの遺産は自宅不動産と預貯金でした。 BさんとCさんはAさんの遺産をどう分けるかを話し合いました。 結果、Bさんが不動産と預貯金の一部を、Cさんが残りの全ての預貯金を受け取ることとなりました。 そしてBさんが手続を行うことになり、不動産の相続登記をし、預貯金を全て
「遺産分割調停はどのように進むの?③」
2023年05月31日
最後に今までお話ししてきたこと以外で、遺産分割調停でトラブルになりやすいことについて、いくつかお話しします。 ・使途不明金 例えば、被相続人Aさんの預貯金を子であるBさんが生前から管理していたとします。 Aさんが亡くなった後で、Aさんの生前に、預貯金から多額の引き出しがなされていることが分かりました。 この引き出しについて、BさんはAさんのために使ったと説明をしましたが、他の相続人はそれでは納得ができない、という場合、この「生前に引き出された預貯金」をどう処理するかという問題が起こります。 この点について、相続人全員で合意ができない場合には、別途民事裁判で決着をつける必要があります。 この
「遺産分割調停の手続はどのように進むの?②」
2023年05月30日
前回の続きです。 相続人の範囲・遺産の範囲・遺産の評価について確定した場合、遺産をどのように分けるかを話し合います。 遺言が存在しない場合には、法定相続分に基づいて遺産を分割をすることになります。 この時、「特別受益」や「寄与分」といった法定相続分を修正する要素が主張されることがあります。 例えば、相続人の一人が被相続人の生前に多額の贈与を受けている、あるいは相続人の一人が被相続人を経済的に支援していた、といったことで、法定相続分どおりに分割するのは不公平だという主張がなされることがあります。 こちらについては、主張をする人がそれを証明する資料などを出して立証する必要がありま
「遺産分割調停の手続はどのように進むの?①」
2023年05月29日
遺産分割の協議がまとまらない場合、家庭裁判所で調停で解決を求めることになります。 この遺産分割調停はどのように進むのでしょうか? 今回はこの遺産分割調停の手続がどのように進むのかについてお話しします(今回は遺言が存在しないことを前提しています)。 遺産分割調停では、まず「相続人の範囲」の確認が行われます。 これは法定相続人が誰か、という点について相続人全員が合意ができるかの確認が行われます。 法定相続人は被相続人の生まれてから亡くなるまでの戸籍から確認ができますが、例えば被相続人が認知症だったのに養子縁組をしているなど、生前の身分関係が争われるということもあります。
「自筆証書遺言のようなものを見つけたけれど、どうすればいいの?」
2023年05月23日
亡くなった親の自宅を整理していたら、「遺言」のようなものがみつかった、というご相談を受けることがあります。 例えば、自宅の金庫の中から遺言書と書いてある封筒が見つかった、といったことが考えられます。 この場合、どのように対応すればよいのでしょうか? まず、相続人が「遺言書」を発見した場合には、家庭裁判所に対して検認の請求をしなければならないことが定められています(民法1004条 参照)。 また、封印のある遺言は、家庭裁判所において相続人またはその代理人の立会いがなければ開封することができないと定められており、家庭裁判所外で開封をした場合には、5万円以下の過料に処する旨も定められています(
「遺産分割の時に約束したことを守ってくれない場合、遺産分割のやり直しはできるの??」
2023年04月28日
遺言が存在しない場合、相続人同士で遺産分割の話し合いを行うことになります。 その際、遺産分割の条件などが付けられることがあります。 例えば長男が残された親の面倒を見る代わりに、遺産を全て相続するというような内容で遺産分割協議がなされたとします。 ところが、そのあと長男が親の面倒を全く見なくなったという場合に、この遺産分割のやり直しを求めることができるのでしょうか? まず遺産分割協議は「相続人全員の合意」があればやり直しをすることは可能です。この場合、長男を含めた全員の合意があればやり直しをすることができます。 では長男がやり直しを拒んだ場合はどうで
「遺言書は公正証書で作らないとダメなの??」
2023年04月25日
遺言書の作成は相続トラブルを防止するためにとても有用です。 一般的な遺言は公正証書遺言と自筆証書遺言の2種類が挙げられますが、ご自身が作成する際に、「どちらがよいか」と悩む方も多いのではないでしょうか。 今回は公正証書遺言と自筆証書遺言、どちらがおすすめなのかをお話しします。 公正証書遺言は、公証役場で作成する遺言です。 原則として遺言者が直接公証役場に行き、公証人の前で遺言書を作成することになります(実際には作成日の前に文案をやりとりし、内容の確認を行います)。 また費用は掛かるものの公証人に出張してもらい、作成をすることも可能です。 公証人が遺言者が希望する
「子どもの一人に全部遺産を相続させたいけど、他の相続人から遺留分を請求されない方法はないの??」
2023年04月19日
遺言作成のご相談・ご依頼を受ける中で、このようなご質問を受けることもあります。 遺留分は、配偶者・子・直系尊属(親)に保障された遺産に対する一定割合の取り分、と考えていただければわかりやすいかと思います。 これは、その人の法定相続分の2分の1(直系尊属のみが法定相続人の場合には3分の1)とされています。 例えば法定相続人が子ども3人、そのうちの一人に遺言で全て遺産を相続させた場合を見てみます。 この場合、遺産をもらえなかった他の子どもから、相続を受けた子どもに対して、自分の遺留分相当額を金銭で払ってほしい、という請求をすることが可能です(これを遺留分侵害額請求といいます。民
「相続トラブルが起きるのはどんな家庭?」
2023年04月17日
相続トラブルが起きてしまうと、それが解決したとしても、その後も尾を引くことがあります。 そのため、相続トラブルはできる限り避けたい問題ではあります。 ただ相続トラブルでご相談に来られる方で、「まさか自分の家がこんなことになるとは思わなかった」とおっしゃられる方もたくさんいらっしゃいます。 そこで、今回は相続トラブルが起きるのはどんな家庭なのか、ということをお話しします。 まず家族内の関係がそもそも悪かったというご家庭ではトラブルが起きてしまうことがあります。 例えば父親と長男が仲が悪かった、母親と次女が絶縁関係というような場合、遺産分割協議の時点で感情的な軋轢が
「今からできる『生前対策』ってどんなことがあるの?②」
2023年04月14日
今回も今からできる生前対策についてお話をします。 今回は相続対策に目を向けてみたいと思います。 相続対策で考えられるのが「相続税対策」と「相続トラブル対策」が挙げられます。 相続税対策については話題に上ることも多く、漠然と相続税は高いものだという意識もあるかもしれません。 ただこのような場合に大切なのは、今の時点で相続が発生した場合には、どの程度相続税がかかるのかということを正確に把握しておくことだと考えます。 相続税対策を考える前に、まずはご自身が亡くなった場合に相続税がどれくらいかかるのかということを、税理士の先生に相談し、確認をしておくことをお勧めします。 次に相続トラブル対策ですが
「今からできる『生前対策』ってどんなことがあるの??①」
2023年04月07日
最近、生前対策について話題に上ることが多いように感じます。 生前対策というと、相続対策というように考えられる方も多くいらっしゃいますが、例えば突然の病気や事故によって、ご本人の意思確認ができなくなってしまった場合に備えておく、ということも含まれると考えます。 そんなことになってしまった場合に、ご家族や周りの方が慌てずに対応できるようにするためにも対策は重要です。 今回は、今からできる生前対策について、お話ししていきます。 まず、ご本人の意思確認ができなくなってしまった場合に困るのは、①預金の管理や契約、そして②医療行為についてです。 ①
「結局、遺言は作っておいた方がよいの??」
2023年04月03日
遺言作成の必要性については、以前からお伝えをしてきております。 ただ、最近、案件対応をさせていただく中で、遺言の有無によって残された人の負担が大きく変わってきてしまうことを実感しています。 そのため、今回も改めて遺言を残すメリットについてお話しします。 遺言を残す法律上のメリットはいろいろありますが、やはり何と言っても最大のメリットは、「自分の意思が尊重される」ということです。 遺言がある場合には、亡くなった方(被相続人)の意思に基づいて、遺産を分け、お墓を承継させ、それ以外の形見と言えるものの取り扱いなども決めることができます。 たしかに不公平な内容であれば、相続