親のお金を使い込んだ!?と疑われてしまった場合の対応②
2025年10月22日
前回、架空のご相談者との法律相談を見ていただきました。 相談者が気づいていない複数の法律上の問題点が隠れています。 どんな問題点があるか、どう対応すべきか見ていきましょう。 使途不明金問題の法律的な考え方 「立証責任」は請求をする側にある 弁護士:まず基本的な考え方からお伝えします。使途不明金がある、それを返還せよと主張するお兄様の側に、「あなたが不当にお金を使った」という立証責任があります。つまり証明する責任はお兄様側にあるのです。 相談者:そうなんですね。兄には説明を求められていますが、私の方は何も説明しなくていいんですか? 弁護士:いえ、そう単純ではありません。あなたはお父様の財産を管理...
親のお金を使い込んだ!?と疑われてしまった場合の対応①
2025年10月15日
この記事のポイント 善意の財産管理が疑われるとき 認知症のご両親の財産管理を任されていた方が、相続開始後に他のご兄弟から「使途不明金がある」と指摘されるケースは、毎年増えているように感じます。 今回は架空のご相談者との法律相談をベースに、使途不明金を疑われた場合の対応についてご紹介します。 ぜひご自身の状況と比べてみてください。 認知症の親の財産を使い込んだと疑われた 相談者 60代 女性 弁護士:今日はご相談にお越しいただき、ありがとうございます。本日はどのようなご相談でしょうか? 相談者:父が3か月前に亡くなって、今、兄と遺産分割の話をしています。ところが兄から「使途不明金がある」と言われ...
親に遺言作成をお願いしたい時の進め方②
2025年10月08日
前回、親に対して遺言作成をお願いする難しさについて、架空の法律相談を通じて見ていただきました。今回は、どのようなアプローチが効果的か見ていきましょう。 第三者を交えた相談の提案 弁護士:効果的なのは、「一度、家族みんなで弁護士に相談してみない?」と提案することです。弁護士といった第三者の専門家が入ることで、客観的な視点からお話しできますし、問題となった事例を聞くことで、お父様も冷静に考えやすくなります。 相談者:確かに、家族だけだと感情的になりがちですからね。 弁護士:当事務所では「相続リスク診断」という、サービスも提供しています。これは相続トラブルを防ぐための事前診断で、「問題が起きてから」...
親に遺言作成をお願いしたい時の進め方①
2025年10月01日
この記事のポイント 親に遺言書を書いてもらいたいと思っても、なかなか話を切り出しにくい、断られてしまう、という方は多いのではないでしょうか。 このような「家族間のデリケートな問題」も、適切なアプローチを行うことで解決の糸口を見出すことができます。相続トラブルについても病気の早期発見と同じで、早めの対策がご家族の平和を守ります。 今回も架空のご相談者からの法律相談をベースに、親への遺言作成のお願いの仕方をご紹介します。 ぜひご自身の状況と比べてみてください。 見えない相続の危険を見つける相続リスク診断 相談者 60代 女性 弁護士:本日はご相談いただきありがとうございます。どのようなことでお困り...
遺産分割協議書作成前に預貯金だけ下ろしてしまうことのリスク②
2025年09月24日
前回は架空の法律相談を基に、遺産分割協議をまとめる前に、預貯金だけ下ろしてしまうことの問題点を取り上げました。今回はどのような対応をすべきかについてお話をします。。 預金の先行引き出しが引き起こすトラブル 弁護士: 合意をした上で預金を先に引き出した場合、お兄さんに遺産分割への意欲が残るかという問題があります。 相談者: それはどういうことでしょう? 弁護士: お兄さんからすれば、預金の半分が入ってきます。ただ、遺産分割協議を進める場合、自宅を失う可能性もあります。このまま住み続けたいお兄さんからすれば、遺産分割協議をするモチベーションが失われる可能性があります。 相談者: 時間をかけて話し合...
遺産分割協議書作成前に預貯金だけ下ろしてしまうことのリスク①
2025年09月17日
この記事のポイント 相続が発生した時、「とりあえず急ぎで必要なお金だけ引き出そう」と考え、実行される方も多いのではないでしょうか。実はこの「とりあえず」の判断が、後になって相続トラブルの原因となってしまうことがあります。 今回も架空のご相談者からの法律相談をベースに、相続手続の順番に潜むリスクと対策をご紹介します。 ぜひご自身やご家族の状況と比べてみてください。 見えない相続の危険を見つける相続リスク診断 相談者 50代 女性 弁護士: 本日はご相談いただき、ありがとうございます。相続についてのお悩みということですが、どのような状況でしょうか? 相談者: 先週、父が急に亡くなりまして、兄と相続...
認知症の父のお金が消えている?使途不明金問題とトラブル予防②
2025年09月10日
前回は架空の法律相談を基に、使途不明金問題について取り上げました。今回はどのような対応をすべきか、どうすれば予防ができたかについてお話をします。 使途不明金問題の解決方法と予防策 弁護士:まずお父さんの生前の判断能力について確認をする必要があります。お父さんは介護保険を利用されていたとのことなので、行政に対して情報開示請求をし、判断能力に関する資料を集める必要があります。 相談者:なるほど。さっそくやってみます。 弁護士: 次に、お兄さんに対して話し合いを求めます。それでも解決しない場合は、家庭裁判所での遺産分割調停の中で争うか、または地方裁判所に民事訴訟を提起して取戻しを求めること...
認知症の父のお金が消えている?使途不明金問題とトラブル予防①
2025年09月05日
この記事のポイント 高齢のご両親のお金を同居の親族が管理しているとケースは多くみられます。しかし、相続時には管理態様が問題になり、遺産分割協議が進まないということもあります。今回も架空の法律相談をベースに、使途不明金問題の実態と対策をご紹介します。 兄がお金を使い込んでいた!? 相談者 60代 女性 弁護士: 本日はご相談にお越しいただき、ありがとうございます。相続に関してどのようなご心配があるのでしょうか? 相談者: 父が2ヶ月前に亡くなりまして、相続の手続きを進めているのですが、少し気になることがあって相談に来ました。 弁護士: お悔やみ申し上げます。どのよう...
遺産分割協議が先延ばしになってしまっている場合のリスクと解決法は?②
2025年09月01日
前回、架空のご相談者との法律相談を見ていただきました。 遺産分割の放置によって生じる深刻なリスクと、その対処法について詳しく解説します。 証拠が散逸してしまうのリスク 弁護士: 遺産分割を放置することで生じる最大のリスクの一つが、証拠が取得できなくなってしまう、散逸してしまうといったリスクです。預貯金の使い込みの調査も、取引記録などの記録が時間の経過とともに入手しにくくなります。金融機関は一定期間を過ぎると、古い取引記録の開示に応じてくれなくなりますので、早期の対応が重要です。 相談者: そうなんですね。もっと早く動くべきでした。 弁護士: 証拠がすべて失われるこ...
遺産分割協議が先延ばしになってしまっている場合のリスクと解決法は?①
2025年08月29日
この記事のポイント 相続が発生しているのに、遺産分割協議を先延ばしにしたり、放置をしたりしていると、思わぬトラブルに発展することがあります。 今回も架空のご相談者からの法律相談を基に、遺産分割協議を先延ばしにしてしまうリスクと対策をご紹介します。 きょうだいが遺産分割協議に応じない!? 相談者 60代 女性 弁護士: 本日はご相談いただき、ありがとうございます。遺産分割のことでお困りとのことですが、詳しくお聞かせください。 相談者: はい。3年前に父が亡くなったのですが、遺産分割がまったく進まなくて困っています。相続人は私(長女)と兄(長男)、それから弟(次男)の3人です。...
相続した不動産が売却できない?共同相続人間のトラブル解決法②
2025年08月27日
前回、架空のご相談者との法律相談を見ていただきました。共有不動産の売却について、全員の合意が得られない場合の問題点と解決策について詳しく見ていきましょう。 共有不動産売却の法的問題点 弁護士: まず、共有不動産の処分については、民法上「共有者全員の同意」が必要とされています。つまり、お一人でも反対される方がいると売却はできません。 相談者: やはりそうなんですね。 弁護士: ただ管理費用の問題は分けて考える必要があります。現在あなたが負担されている固定資産税や維持管理費は、法的には共有者全員が負担すべきものです。 そのため他の共有者に対して、その負担分を請求する権利があります。 相...
相続した不動産が売却できない?共同相続人間のトラブル解決法①
2025年08月25日
この記事のポイント 相続した実家の売却を進めたいのに、兄弟姉妹の中に反対する人がいて話が進まない──このようなトラブルでお悩みの方は少なくありません。 今回も架空のご相談者からの法律相談をベースに、共同相続人間で売却に向けた合意が進まない場合に起きる問題と対策をご紹介します。ぜひご自身やご家族の状況と比べてみてください。 共同で相続した実家の処分ができない!? 相談者 60代 女性 弁護士: 本日はお忙しい中、ご相談にお越しいただきありがとうございます。 相続された不動産についてお困りとのことですが、詳しい状況を教えていただけますか? 相談者: はい。昨年父が亡くなって、敷地と実家の古い一戸建...