遺産分割協議が先延ばしになってしまっている場合のリスクと解決法は?②
2025年09月01日
前回、架空のご相談者との法律相談を見ていただきました。 遺産分割の放置によって生じる深刻なリスクと、その対処法について詳しく解説します。 証拠が散逸してしまうのリスク 弁護士: 遺産分割を放置することで生じる最大のリスクの一つが、証拠が取得できなくなってしまう、散逸してしまうといったリスクです。預貯金の使い込みの調査も、取引記録などの記録が時間の経過とともに入手しにくくなります。金融機関は一定期間を過ぎると、古い取引記録の開示に応じてくれなくなりますので、早期の対応が重要です。 相談者: そうなんですね。もっと早く動くべきでした。 弁護士: 証拠がすべて失われるこ...
遺産分割協議が先延ばしになってしまっている場合のリスクと解決法は?①
2025年08月29日
この記事のポイント 相続が発生しているのに、遺産分割協議を先延ばしにしたり、放置をしたりしていると、思わぬトラブルに発展することがあります。 今回も架空のご相談者からの法律相談を基に、遺産分割協議を先延ばしにしてしまうリスクと対策をご紹介します。 きょうだいが遺産分割協議に応じない!? 相談者 60代 女性 弁護士: 本日はご相談いただき、ありがとうございます。遺産分割のことでお困りとのことですが、詳しくお聞かせください。 相談者: はい。3年前に父が亡くなったのですが、遺産分割がまったく進まなくて困っています。相続人は私(長女)と兄(長男)、それから弟(次男)の3人です。...
相続した不動産が売却できない?共同相続人間のトラブル解決法②
2025年08月27日
前回、架空のご相談者との法律相談を見ていただきました。共有不動産の売却について、全員の合意が得られない場合の問題点と解決策について詳しく見ていきましょう。 共有不動産売却の法的問題点 弁護士: まず、共有不動産の処分については、民法上「共有者全員の同意」が必要とされています。つまり、お一人でも反対される方がいると売却はできません。 相談者: やはりそうなんですね。 弁護士: ただ管理費用の問題は分けて考える必要があります。現在あなたが負担されている固定資産税や維持管理費は、法的には共有者全員が負担すべきものです。 そのため他の共有者に対して、その負担分を請求する権利があります。 相...
相続した不動産が売却できない?共同相続人間のトラブル解決法①
2025年08月25日
この記事のポイント 相続した実家の売却を進めたいのに、兄弟姉妹の中に反対する人がいて話が進まない──このようなトラブルでお悩みの方は少なくありません。 今回も架空のご相談者からの法律相談をベースに、共同相続人間で売却に向けた合意が進まない場合に起きる問題と対策をご紹介します。ぜひご自身やご家族の状況と比べてみてください。 共同で相続した実家の処分ができない!? 相談者 60代 女性 弁護士: 本日はお忙しい中、ご相談にお越しいただきありがとうございます。 相続された不動産についてお困りとのことですが、詳しい状況を教えていただけますか? 相談者: はい。昨年父が亡くなって、敷地と実家の古い一戸建...
配偶者を亡くした70代が考える施設入居と相続対策~年代別に気を付ける相続対策④~
2025年08月22日
配偶者を亡くして一人になると、「この家で一人で暮らし続けられるだろうか」「老人ホームに入るなら家はどうしよう」という不安が生まれます。70代から施設入居を検討する際は、不動産の処分と今後の介護費用の対応、相続対策を同時に考える必要があります。 この記事のポイント 配偶者を亡くされた70代女性からの語相談 相談者 70代 女性 無職 弁護士: 本日はご相談いただき、ありがとうございます。お電話では老人ホームへの入居を検討されているとのことでしたが、詳しくお聞かせください。 相談者: 2年前に夫を亡くしまして、それからずっと一人で住んでいます。でも最近、家事も大変になってきて、何かあった時に一人で...
親の相続を経験した60代が考える「自分の相続準備」の重要性~年代別に気を付ける相続対策③~
2025年08月20日
親の相続を実際に経験すると、「今度は自分の番だ」と痛感します。60代になると、親の相続で学んだ教訓を活かして、子どもたちに同じ苦労をかけないよう準備を始める方が増えています。 この記事のポイント 親の相続を終えた60代からの相談 相談者 60代 男性 弁護士: 本日はご相談いただき、ありがとうございます。どのようなことでお悩みでしょうか? 相談者: 実は昨年、父の相続手続きが終わりました。母は10年前に亡くなっており、今回は父一人の相続でした。ただ手続きが思っていた以上に大変で、今度は自分の相続準備をしっかりしておきたいと思い、相談に伺いました。 弁護士: 実際に相続を経験されると、準備の大...
認知症の親を持つ50代が直面する相続問題と対策法~年代別に気を付ける相続対策②~
2025年08月18日
50代になるとご両親の認知症が現実的な問題となってきます。「もう遺言書は書けないの?」「成年後見人って何?」といった疑問が次々と浮かんできます。 この記事のポイント 親が認知症と診断された方からのご相談 相談者 50代 男性 会社員 弁護士: 本日はお忙しい中、ご相談にお越しいただきありがとうございます。 相談者: 実は先月、母が認知症と診断されました。父は2年前に亡くなっており、母は一人暮らしをしていたのですが、最近物忘れがひどくなって、近所の方からも心配されるようになりました。 弁護士: お母様の認知症の程度はいかがですか? 相談者: 医師からは「軽度から中等度」と言われています。日によっ...
親の介護をしながら相続準備をする40代が知っておくべき3つのポイント~年代別に気を付ける相続対策①~
2025年08月15日
親の介護が始まると、多くの方が「将来の相続はどうなるの?」という不安を抱えます。特に40代の方は、自分の子どもの教育費もかかる中で、親の介護費用の負担も重なり、経済的な心配が尽きません。今回も架空の法律相談を中心にこの問題にフォーカスしてみます。 この記事のポイント 親の介護と相続準備で悩む40代からの相談 相談者 40代 女性 会社員 弁護士: ご相談にお越しいただきありがとうございます。どのようなことでお困りでしょうか? 相談者: 父が要介護認定を受けて、これから介護が始まる予定です。母はすでに5年前に亡くなっており、父は一人暮らしをしています。介護のことを考えると、将来の相続についても心...
15年連れ添ったパートナーの突然の死、内縁の妻が直面した保険金請求の壁を解決」 解決事例より⑩
2025年08月13日
この記事のポイント 「夫婦同然に暮らしてきたのに、なぜこんなに大変なの…」 事実婚・内縁関係を選ぶ方も以前に比べて多くなりました。お互いを支え合い、家族として生活してきたとしても、パートナーの突然の死により、手続きで想像以上の壁が立ちはだかることがあります。 依頼者の状況 問題点の整理 法的な課題内縁関係を証明するための書類の不足により、保険会社が求める必要書類の取得が困難でした。法律婚であれば戸籍謄本で済むところが、内縁関係では別途の証明が必要となります。 手続き上の複雑さ保険会社から提示された書類リストを見ても、どこでどのように取得すればよいのか分からず、一人では対応しきれない...
「自分で作った遺言書で大丈夫?」相続トラブルを未然に防ぐために遺言書の見直しをした事例 解決事例より⑨
2025年08月11日
この記事のポイント ・自分で遺言書を作成することのリスク・抽象的な表現が招く家族間の争い・弁護士によるチェックの必要性と重要性 「これで本当に大丈夫でしょうか…」 ご家族への愛情から遺言書を作成される方は多くいらっしゃいます。しかし、その想いが確実に実現されるかどうかは遺言書の内容次第です。 依頼者の状況 問題点の整理 作成された遺言書を詳しく拝見したところ、以下の問題が見つかりました: 遺産を分割の表現が抽象的「適切に分割する」といった曖昧な表現のため、結局は相続人同士の協議が必要な状態でした。 配偶者が先に亡くなった場合への配慮不足配偶者の方が先に亡くなった場合、そ...
「対立している親族に全財産を渡す遺言書」依頼者の遺留分相当額を協議で確保した事例 解決事例より⑧
2025年08月08日
この記事のポイント 「不平等な内容」の遺言書が発見された 亡くなったお母さんの遺言書には「長男に全財産を相続させる」と書かれていました。遺産をどのように相続させるかについては、亡くなった方が決めることができます。そのため、時として「不平等」と感じる内容の遺言が残されることもあります。 依頼者の状況 問題点の整理 感情的な対立の深刻化介護問題や財産管理を巡る意見の違いで、きょうだい関係が完全に破綻状態。直接話し合うことはほぼ不可能 遺留分に関する知識不足依頼者は「遺留分」という権利があることを知りませんでした。 話し合いのきっかけがないきょうだいとの関係悪化により、話し合いができる状態ではありま...
「兄の借金で相続放棄を検討」が一転 過払い金が発生し、問題なく相続手続きを行った事例 解決事例より⑦
2025年08月06日
この記事のポイント ・消費者金融からの督促状で相続放棄を検討・ 専門調査で借金ゼロ・過払い金(不当利得返還請求権)が判明・ 早期相談が方針を分けた重要なケース 「亡くなった兄に借金があることが分かり相続放棄を検討」 お兄様を亡くされた直後、お兄様あてに届いていた消費者金融からの督促状。そこには高額な請求金額が記載されていました。相続は、故人との最後のつながりでもあります。しかし、時として予想もしない現実を突きつけられることもあるのです。 依頼者の状況 問題点の整理 借金の実態が不明確消費者金融からの請求書が複数届いており、借金の総額が分からない 相続放棄を行った場合相続放棄となればお兄さんの不...