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コラム

成年後見制度の利用を躊躇する理由は何か

2015年09月26日

 成年後見制度を利用している方は、最高裁判所家庭局公表の資料によれば、平成26年12月の時点で、合計で約18万人とされています。
 成年後見制度は判断能力が、乏しくなった人を援助する制度と一般的に説明されていますが、一方で認知症を罹患されている方は、厚生労働省公表の資料によれば平成24年の時点で、約460万人とのことです。
 罹患者の数は増加傾向にあるとのことですので、平成26年における認知症をり患した人の数は、平成24年よりも増えていると思われますが、成年後見制度を利用している方は、上記と比べると圧倒的に少ないと思われます。
 特に、成年後見制度はご本人の判断能力に応じて、補助、保佐を利用することもできますが、それらを合計しても約18万件に留まっています。
 その理由については、いろいろ考えられますが、相談を受けていると、①制度自体を知らない、②きっかけがなかったといったことの他にも、③家族以外の知らない人が財産を管理することが嫌、ということで制度利用をためらうという場合も一定数ある、と感じます。
 成年後見人、保佐人、補助人は裁判所が職権で選任します。
 この場合、裁判所への申立ての際に、後見人などの候補者を挙げることができます。例えば、夫について成年後見制度を利用したい場合に、妻が申立てをすると同時に自分を候補者として挙げることは可能です。
 もっとも、成年後見人などに誰を選任するかは、裁判所が決めるので、候補者に限定されることはありません。
 例えば、候補者が選任されない場合としては、候補者が高齢で業務が出来ない場合、遠隔地に住んでいる場合、後見業務として行わなくてはいけない業務が専門職でないと対応が出来ないような場合、そして不適格と思われるような事由が認められる場合(本人の財産を流用する恐れがあるなど)などが挙げられます。
 この場合、裁判所は候補者以外の第三者を成年後見人などに選任します。 そして、誰を成年後見人などに選任するかということ自体に対しては、即時抗告はできないとされています。
 そのため、家族が自分を候補者として申し立てを行っても、第三者である専門職が後見人などに就任するといったことも起こります。
 となると、第三者が家族の財産を管理することが嫌ということで、成年後見制度自体の利用を躊躇われるという方もいらっしゃいます。
 制度の趣旨からすれば、ご家族の希望よりも本人にとって、一番ふさわしい人を後見人などに選任するべきということになるのですが、ご家族の感情面を考えると、なかなか複雑な問題ではないかと思います。
 なお、ご本人に判断能力がある場合には、自分が判断能力が無くなった場合に備えて、予め任意後見契約を締結しておくことで、ご本人に自分の財産を管理してもらう人を予め指定してもらう、ということも考えられます。