利用者のご自宅にケアマネージャーさんやヘルパーさんが訪問する際に、自転車を使っている場合も多いかと思われます。
自転車による交通事故は、神奈川県内では、平成26年に6916件発生しているとのことです(神奈川県警察本部 交通部交通総務課公表の かながわの交通事故 平成26年より)。
ここで、介護事業所に勤めるAさんが、業務時間中、利用者宅への訪問するために自転車に乗っていたところ、Bさんに接触してしまい、Bさんを怪我をさせてしまった場合のことを考えます。
この場合、Aさん自身がBさんに対して損害賠償責任を負う場合(不法行為(民法709条)が成立する場合)、Aさんの雇用主である介護事業所も使用者として責任を負う場合があります(民法715条1項)。
使用者責任については、被用者が事業の執行について、第三者に損害を加えた場合に、使用者に責任が生じるとされています。この「事業の執行について」の要件は、裁判例上、行為の外形を基準に判断されるとされています。
そのため、Aさんが利用者宅を訪問する際に、事業所も自転車を利用することを容認していたり、自転車自体を事業所で用意していたような場合には、業務執行性が認められ、使用者として事故によってBさんに生じた損害を賠償しなくてはならないといったことも考えられます 。
(なお、使用者責任は、免責される場合が定められていますが(民法715条1項但書)、一般的にこの要件の立証は非常に困難とされています)
自転車による事故の場合でも、相手の方が死亡してしまったり、重傷を負ってしまったりというように、自動車による交通事故と変わらない結果を招いてしまうこともあります。その場合、莫大な損害賠償請求を受けることになりかねません。
自転車の場合、自動車とは異なり自賠責のような強制加入保険はありませんし(2015年5月現在)、別途自転車専用の保険に入っている方も少ないと思われますので、予想外の賠償責任を負ってしまう可能性もあります。
そのため、事業所において加入している保険や、個人で加入されている保険が自転車による事故が発生してしまった場合にも適用されるかどうか、必ず確かめておく必要があります。