この記事のポイント
- 遺言作成の話を切り出すタイミングと方法
- 親の心理的な抵抗感を理解した上でのアプローチが必要
- 弁護士を交えた話し合いで円滑に進めることができる
親に遺言書を書いてもらいたいと思っても、なかなか話を切り出しにくい、断られてしまう、という方は多いのではないでしょうか。
このような「家族間のデリケートな問題」も、適切なアプローチを行うことで解決の糸口を見出すことができます。
相続トラブルについても病気の早期発見と同じで、早めの対策がご家族の平和を守ります。
今回も架空のご相談者からの法律相談をベースに、親への遺言作成のお願いの仕方をご紹介します。 ぜひご自身の状況と比べてみてください。
見えない相続の危険を見つける相続リスク診断
相談者 60代 女性
弁護士:本日はご相談いただきありがとうございます。どのようなことでお困りでしょうか?
相談者:実は父に遺言書を書いてもらいたいのですが、どうやって話を切り出せばいいか分からなくて相談に来ました。
弁護士:なるほど。お父様に遺言作成をお願いしたいということですね。まずはご家族の状況を教えていただけますか?
相談者:父は85歳で、母は3年前に亡くなりました。子どもは私と弟の2人です。弟は東京で仕事をしていて、父は私の自宅近所で1人暮らしをしています。
弁護士:お父様は現在お元気でいらっしゃいますか?
相談者:はい、幸い健康で頭もしっかりしています。ただ最近、父の同年代の知人が亡くなることが増えて、私も不安になってきました。
遺言作成を切り出すのが難しい理由
弁護士:遺言書について、お父様とお話しされたことはありますか?
相談者:一度だけ「遺言書とか書いておいた方がいいんじゃない?」と言ったことがあるんです。そうしたら父が「縁起でもない」「まだ死ぬつもりはない」と言って、その後話題に出せなくなってしまいました。
弁護士:そのような反応をされる方は多いですね。お父様のお持ちの財産はどのような感じでしょうか?
相談者:実家の土地建物と預貯金です。実家は築40年ほどですが、立地が良いのでそれなりの価値があると思います。
弁護士:お父様はご自身の相続問題について、どのようにお考えでしょうか?
相談者:父は私と弟が話し合って決めればいいと言うだけで、自分の意思をはっきり示してくれません。
遺言作成に抵抗感を持つ心理
弁護士:なぜ遺言書を書いてもらいたいと思われるのですか?
相談者:正直なところ、弟と私で考えが違うので、後々もめるのではないかと心配なんです。父がきちんと意思を示してくれれば、私たちも納得できると思うのですが。
弁護士:とても大切な観点ですね。お父様が遺言作成に抵抗感を示される理由は理解できますか?
相談者:死を意識させるから嫌なのかなと思います。あと、私たちが財産目当てで言っているように感じているかもしれません。
弁護士:なるほど。たしかにご相談を受けたり、セミナーを実施しているとと「遺言書=死の準備」とか自分の財産を失ってしまう、と捉えてしまう方も多い気がしますね。
相談者:どうすれば理解してもらえるでしょうか?
弁護士:まず大切なのは、話を切り出すタイミングがとても重要だと思います。それから、遺言書を「死の準備」ではなく「家族への思いやり」として伝えることが重要です。
相談者:具体的にはどのように伝えていけばよいでしょうか?
弁護士:その点について詳しくお話ししますね。
この事例ではどこに問題があるでしょうか?
親に遺言作成をお願いしたいけれど、なかなか話を切り出せない、理解してもらえない、というご家庭は多いのではないでしょうか。
この相談者の方のように、きちんとした動機があっても、アプローチの仕方によっては親御さんの反発を招いてしまうことがあります。
実はこのようなケースでも、適切なアプローチ方法がいくつか考えられます。
どのような点に注意すべきか、それに対してどのような対応が効果的か。
次回詳しく見ていきます。