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遺産分割協議が先延ばしになってしまっている場合のリスクと解決法は?②

2025年09月01日

前回、架空のご相談者との法律相談を見ていただきました。 遺産分割の放置によって生じる深刻なリスクと、その対処法について詳しく解説します。

証拠が散逸してしまうのリスク

弁護士: 遺産分割を放置することで生じる最大のリスクの一つが、証拠が取得できなくなってしまう、散逸してしまうといったリスクです。
預貯金の使い込みの調査も、取引記録などの記録が時間の経過とともに入手しにくくなります。金融機関は一定期間を過ぎると、古い取引記録の開示に応じてくれなくなりますので、早期の対応が重要です。

相談者: そうなんですね。もっと早く動くべきでした。

弁護士: 証拠がすべて失われることは稀ですが、やはり早期の対応が有利です。具体的な解決方法をご説明しますね。

まず、お父さんの遺産について現在の状況を正確に把握する必要があります。不動産の価値がどの程度あるのか、預貯金の取引履歴やお父さんの介護・医療記録などの取り寄せを行い、使途不明金の調査を行います。

相談者: そのような調査は個人でもできるのでしょうか?

弁護士: 相続人である以上、お父さんの財産調査を行うことはできます。
ただ手続きが複雑だったり集める資料も多いので、自信がない場合には弁護士に依頼されることをお勧めします。

相談者:分かりました。

弁護士:その上で「遺産分割調停」の申し立てを家庭裁判所に行うことが考えられます。調停では、中立的な調停委員が各相続人の意見を聞き、合理的な解決案を提示してくれます。

相談者: 調停で兄がこちらの要求に応じない場合はどうなりますか?

弁護士: 調停が成立しない場合は、「審判」手続に移行させることができます。
審判では、家庭裁判所が法定相続分に基づき、強制的に遺産分割の方法を決定します。そのため、お兄さんが拒否していても遺産分割を行うこと自体は可能です。

相談者:そうなんですね!

弁護士: ただ、預貯金の使い込みに対する不当利得などをお兄さんが認めない場合には、別途「不当利得返還請求訴訟」などを提起して、解決を図る必要があります。

相談者: 複雑なんですね。

弁護士: ただ裁判でこちらの主張が認められれば、お兄さんが拒否していても支払いをしなくてはなりません。

このように審判や裁判などに至る可能性があることを踏まえると、調停で解決した方がいいか、と思って話し合いに応じてくることもあります。

相談者:なるほど。

弁護士: このような問題を抱えている方に最も重要なアドバイスは、「早期に行動に移すこと」です。
時間が経過するほど、証拠が集めにくくなったり、また相手方の既得権の意識も強くなったりして、話し合いが困難になります。

相談者: 分かりました。でも、 一人ではとても対応できそうにありません。ぜひ対応をお願いします。

弁護士: 承知しました。
まず現状の正確な把握から始めて、段階的に問題を解決していきましょう。失われた利益の回復と、公平な遺産分割の実現を目指して頑張りましょう。

まとめ

遺産分割協議を放置してしまうことは、解決が困難になる典型的なパターンです。特に相続人の一人が、遺産を利用している場合、現状維持を望む気持ちから、話し合いでの解決は困難になりがちです。

残念ですが、「家族だから大丈夫」という思い込みが、かえって問題を深刻化させることもあります。
出来る限り早く弁護士に相談し、行動に移すことが、あなたの権利と財産を守る最良の方法となります。

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