Column

相続した不動産が売却できない?共同相続人間のトラブル解決法②

2025年08月27日

前回、架空のご相談者との法律相談を見ていただきました。
共有不動産の売却について、全員の合意が得られない場合の問題点と解決策について詳しく見ていきましょう。

共有不動産売却の法的問題点

弁護士:  まず、共有不動産の処分については、民法上「共有者全員の同意」が必要とされています。つまり、お一人でも反対される方がいると売却はできません。

相談者: やはりそうなんですね。

弁護士: ただ管理費用の問題は分けて考える必要があります。
現在あなたが負担されている固定資産税や維持管理費は、法的には共有者全員が負担すべきものです。 そのため他の共有者に対して、その負担分を請求する権利があります。

相談者: そうなんですか!それは知りませんでした。

弁護士: ただ空き家が老朽化し、それが原因で誰かに損害を与えた場合、共有者全員が連帯して賠償責任を負う可能性があります。例えば、屋根瓦が落ちたり、家屋の一部が倒壊して、第三者をケガさせてしまった場合などです。
そのことをご兄弟に話して、処分方針を検討することが考えられます。

相談者: なるほど。具体的にはどうすれば解決できるでしょうか?

具体的な解決方法

1. 遺産分割調停の活用

弁護士: まず考えられるのは、家庭裁判所の「遺産分割調停」です。
今回、正式な遺産分割協議が成立していない場合、遺産分割調停を申し立てることができます。

相談者: 調停というのは、どのような手続きですか?

弁護士: 家庭裁判所の調停委員が間に入って、話し合いをサポートしてくれる制度です。 公平な第三者が入ることで、感情的にならずに話し合いができることが多いです。これにより、不動産の処分方針について話し合いをすることができます。

2. 共有物分割請求

弁護士: 遺産分割協議が終わっている場合は、「共有物分割請求」という手続きがあります。調停の申し立てをして、不動産の処分方針について話し合いをすることができます。

相談者: なるほど。

弁護士: 調停でも合意に至らない場合には、裁判を起こすことができます。
その場合には、最終的には「競売」を求めることもできます。

相談者: 競売になると、安く売られてしまうのではないですか?

弁護士: 一般的には市場価額よりも安くなってしまうと言われています。
全員にとって不利益になる可能性が高いので、それを避けるために積極的に話し合いをすることにもつながります。

3. 持分買取という選択肢

弁護士: もう一つの方法として、あなたが他の共有者の持分を買い取る、または他の共有者があなたの持分を買い取るという方法もあります。

相談者: 兄に買い取ってもらうことも考えられますね。
買取の場合、価格はどう決まるのですか?

弁護士: こちらについては、話し合いになりますが、例えば不動産業者さんによる査定、近隣の取引事例を参考にすることが多いですね。
また、遺産分割調停や共有物分割請求の調停などの手続きの中で、買い取りを求めることも考えられます。

早期解決のメリット

弁護士: いずれにしても、早期の対応が重要です。 時間が経つほど維持費用がかさみますし、建物の老朽化も進みます。

相談者: そうですね。でも兄弟関係を悪化させたくない、という気持ちまだ残っています。

弁護士: おっしゃるとおりですね。ただ問題を放置することで関係がさらに悪化することも多いのです。 法的手続きを取ることで、かえって冷静な話し合いができるようになることもあります。

相談者: 分かりました。一人で悩んでいても解決しませんし、対応をお願いします。

弁護士: はい。 私たちがしっかりとサポートさせていただきますので、ご安心ください。

まとめ

共有している居住用不動産について処分方針が決まらない場合、放置すればするほどリスクや負担が高まります。
他方で法的手続きを活用することで、感情的な対立を避けながら合理的な解決を図ることも可能です。

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