配偶者を亡くして一人になると、「この家で一人で暮らし続けられるだろうか」「老人ホームに入るなら家はどうしよう」という不安が生まれます。
70代から施設入居を検討する際は、不動産の処分と今後の介護費用の対応、相続対策を同時に考える必要があります。
この記事のポイント
- 施設入居時の自宅処分方法と相続への影響がわかる
- 入居費用の準備と財産保全の両立方法を理解できる
- 一人暮らしでもできる相続準備の具体策を把握できる
配偶者を亡くされた70代女性からの語相談
相談者 70代 女性 無職
弁護士: 本日はご相談いただき、ありがとうございます。
お電話では老人ホームへの入居を検討されているとのことでしたが、詳しくお聞かせください。
相談者: 2年前に夫を亡くしまして、それからずっと一人で住んでいます。でも最近、家事も大変になってきて、何かあった時に一人では不安で。
今のうちに施設への入居を考えています。
弁護士: ご家族はいらっしゃいますか?
相談者: 息子が2人いますが、長男は東京、次男は大阪に住んでいて、たまに様子を見に来てくれる程度です。どちらも家庭がありますから、一緒に住むことは考えていません。
弁護士: 施設への入居をお考えということですが、ご自宅はどうされる予定ですか?
相談者: それが一番の悩みです。入居費用もかなりかかると聞いていますし、この家を売却してその資金に充てることも考えています。
でも、夫と一緒に住んだ思い出の家ですから迷っています。
弁護士: 当然のことですよね。ご自宅の他にどのような財産がおありですか?
相談者: 夫から相続した預貯金と、少しの株式があります。ただ、有料老人ホームの入居一時金だけで500万円以上かかると言われています。、今ある預貯金だけでは足りません。
施設入居費用と自宅売却の判断
弁護士: 老人ホームの費用は確かに高額ですね。ご自宅を売却することは大きな決断になると思いますし、タイミングも重要ですね。
相談者: どのような点でしょうか?
弁護士:例えば、施設に入ってもいろいろな事情で自宅に戻りたい、と思われる方もいます。そのため、やはり売らなければよかった、ということは避けなければなりません。
相談者: たしかに、それはそうかもしれませんね。
弁護士: まずは数カ月程度施設での生活に慣れてから売却を検討するという方法もありますね。もちろん、その間の入居費用との兼ね合いを考える必要もありますが。
息子たちとの相続に関する話し合い
相談者: 息子たちには、まだ施設入居の話もしていませんし、相続のこともはなしていません。どのように切り出せば良いでしょうか?
弁護士: 息子さんたちは、そもそも老人ホーム入居についてどのようにお考えでしょうか?
相談者: 長男の方は私の事情をある程度分かっているかもしれませんが、次男は、1年に数回会う程度なので、分かっていないと思います。
私の預金のことなども伝えていないので、施設に入るなら家を売ることになるかもしれないとも伝えていません。
弁護士: 息子さんたちにとって、実家は思い出の場所でもありますから、売却については、事前に伝えておいた方が無難でしょうね。
また相続に関しても今のうちに意向を確認しておくべきでしょう。
相談者: 実は夫が亡くなったあと、遺言を作成しました。
ただ自宅を売るとなると、遺言に書いてある内容が変わってしまいますね。
弁護士: そのとおりです。
不動産を売却すると財産構成が大きく変わるので、遺言書の内容も見直しが必要になります。ただし遺言書は何度でも書き直すことができますので、状況の変化に応じて更新していけば大丈夫です。
これからの財産管理
相談者: 預貯金通帳などは持ち込めないという話を聞いたことがあります。それに私が認知症になったりしたら、お金の管理をすればどうすればよいか不安です。
弁護士: 例えば財産管理契約や、判断能力が低下した場合に備えて、任意後見契約を結んでおくという方法があります。これにより、あらかじめ信頼できる人に財産管理を委ねることができます。
相談者: そうなんですね。息子たちに任意後見人になってもらうことはできますか?
弁護士: 可能です。息子さんたちと相談して、どちらか一人、または両方に任意後見人になってもらうことができます。
ただ意見や方針が割れてしまって動けなくなることなどは防ぐ必要がありますね。
相続税対策と生前贈与の検討
相談者: それと相続税のことも心配です。
弁護士: 現在の財産額はどの程度でしょうか?
相談者: 自宅を売却すれば、預貯金と合わせて6000万円程度になりそうです。
弁護士: ご相談時点の相続税の基礎控除額ですが、息子さん2人が相続人の場合、3000万円+ 600万円×2人分の合計4200万円とされています。
相談者: そうすると、私の場合には相続税がかかってきそうですね
弁護士:ただ、これから施設に入居され、その費用もかかってくることになりますから、それも踏まえて考える必要があります。
また息子さんや息子さんのご家族に少しずつ生前贈与をしていくことも考えられますね。
一人でもできる相続準備の進め方
相談者: 一人になってから、いろいろな手続きが不安になりました。夫がいた時とは違って一人で決めなければならないことが増えて…
弁護士: お一人での判断は確かに不安ですよね。
ただ段階的に準備を進めることで、負担を軽くすることができます。
相談者: どのような順番で進めれば良いでしょうか?
弁護士: まず、現在の財産状況を整理することから始めましょう。財産目録を作成し、施設の費用と照らし合わせて、資金計画を立てます。
その上で息子さんたちと話し合いの場を設け、最後に遺言書や任意後見契約書の作成という流れが良いでしょう。
相談者: 1人では不安ですね。
弁護士: 不動産の評価や相続税の試算などは専門的な知識が必要になりますので、私たちがサポートいたします。
相談者: 今日相談して、やるべきことが整理できました。ぜひサポートをお願いします。
弁護士: ありがとうございます。
お一人での生活は不安なことも多いと思いますが、適切な準備をすることで、安心してセカンドライフを過ごすことができます。
息子さんたちにとっても、お母様が元気なうちに準備をしておくことは大きな安心につながりますよ。
まとめ
一人での判断は不安なものですが、弁護士のサポートを受けながら段階的に準備を進めることで、安心できる老後と円滑な相続を実現できます。
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