親の相続を実際に経験すると、「今度は自分の番だ」と痛感します。
60代になると、親の相続で学んだ教訓を活かして、子どもたちに同じ苦労をかけないよう準備を始める方が増えています。
この記事のポイント
- 親の相続をした経験からやるべきことを把握する
- 60代から始める効果的な相続準備の方法を理解できる
- 子どもたちに負担をかけない相続対策を把握できる
親の相続を終えた60代からの相談
相談者 60代 男性
弁護士: 本日はご相談いただき、ありがとうございます。どのようなことでお悩みでしょうか?
相談者: 実は昨年、父の相続手続きが終わりました。母は10年前に亡くなっており、今回は父一人の相続でした。
ただ手続きが思っていた以上に大変で、今度は自分の相続準備をしっかりしておきたいと思い、相談に伺いました。
弁護士: 実際に相続を経験されると、準備の大切さを実感されますよね。どのような点が大変でしたか?
相談者: まず遺言書がなかったことです。父は「遺言なんて縁起でもない」と言って、全く準備していませんでした。私と弟の2人で遺産分割協議をしましたが、不動産の評価で意見が分かれて、最後は調停までいってしまいました。
弁護士: 遺言書がないと、そういったことも起こりますよね。
相談者:そもそも父の財産がどこにあるか把握するのに苦労しました。複数の銀行に口座があって、中には十年以上も使っていない古い通帳もありました。証券会社の口座も忘れていたものがあって、全部調べるのにかなり時間がかかりました。
弁護士: 財産の把握は多くのご家庭で問題になりますね。
では、ご家族構成を教えていただけますか?
相談者: 妻と長男、長女の4人家族です。長男は結婚して独立し、長女もまもなく結婚予定です。私たちの財産は父から相続した実家と自宅、それに退職金や預貯金があります。
親の相続から学んだ教訓を活かす
弁護士: ご自身の相続については、どのようにお考えですか?
相談者: まず遺言書は絶対に作りたいです。預金とか株式の一覧表のようなものも作っておきたいと思います。子どもたちには同じ苦労をかけたくありません。
弁護士: とても良いお考えですね。遺言は、どのような内容をお考えですか?
相談者: 基本的には妻にすべて相続させたいと思っています。子どもたちはまだ若いですし、妻の老後の生活を安定させることが一番大切だと考えています。
弁護士: それはその通りですね。ただ、「遺留分」についても気をつけなければいけません。
相談者: 遺留分ですか?
弁護士: 遺留分とは、法定相続人に最低限保障された相続分のことです。お子さんたちの場合、それぞれ全体の8分の1ずつの遺留分があります。
遺言で奥様にすべて相続させると書いても、お子さんたちが遺留分を請求する可能性があります。これを遺留分侵害額請求と言います。
相談者: たしかに、その点は考えていませんでした。
二次相続を見据えた対策の重要性
弁護士: また重要になるのが「二次相続」を見据えた対策です。二次相続とは、今回の場合、奥様が亡くなった時の相続のことです。
相談者: そこも考える必要があるのですね。
弁護士: はい。例えば、一次相続で奥様がすべて相続し、次にお子さん達となるとトータルで支払う相続税が高くなる可能性があります。
また奥様がご高齢になってからだと奥様自身の相続対策を考えるのは難しくなります。
相談者: 具体的にはどのような対策が考えられますか?
弁護士: 一つは、一次相続でお子さんたちにも一定の財産を相続してもらう方法です。
相談者: でも妻の生活が心配です。
弁護士: その点については、奥様には自宅と生活に必要な預貯金を確保し、その他の財産をお子さんたちに相続してもらうという方法もあります。また、生前贈与を活用して、段階的に財産を移していく方法も効果的です。
財産整理と子どもたちとの話し合い
相談者: 父の相続では、古い通帳や使わない不動産もあって整理が大変でした。自分の場合はどうすれば良いでしょうか?
弁護士: 生前の財産整理はとても重要です。まず財産目録を作成し、使わない口座は解約、不要な不動産は売却を検討されることをお勧めします。
相談者: 父から相続した実家も、正直なところ使い道がなくて困っています。
弁護士: 使わない不動産は維持費もかかりますし、将来お子さんたちの負担になる可能性があります。売却や活用方法を検討されてはいかがでしょうか。売却した資金は、奥様の老後資金や、お子さんたちへの生前贈与に活用することもできます。
相談者: 子どもたちには、どのタイミングで相続の話をすれば良いでしょうか?
弁護士: できるだけ早めに話し合いを始められることをお勧めします。
ご自身が元気なうちに家族の意向を確認し、合意を形成しておくことが大切です。
相談者: 子どもたちも「縁起でもない」と言うかもしれません。
弁護士: 確かにそのような反応をされる方もいらっしゃいます。その場合は、「お父さんの相続で大変だったから、同じ思いをさせたくない」という気持ちを伝えてみてください。実際の経験談は説得力があります。
弁護士と連携した包括的な対策
相談者: 相続税についても心配です。どの程度かかるものでしょうか?
弁護士: 相続税については、税理士と連携して試算させていただくことができます。現在の財産額と将来の見込みを基に、どの程度の税金がかかるかを計算し、それに基づいて相続対策を考えていきましょう。
相談者: 今日お話を聞いて、自分が思っていたより準備すべきことが多いことが分かりましたし、具体的に何をすれば良いかが見えてきました。
弁護士: 実際に相続を経験された方は、準備の重要性をよく理解されています。お父様の相続で学ばれたことを活かして、お子さんたちには円滑な相続を残してあげましょう。
まとめ
親の相続を経験した方には、その教訓を活かして自分の相続準備を進めることをお勧めしています。
遺言書の作成、財産整理、二次相続対策など、やるべきことは多岐にわたりますが、早めに取り組むことでお子さん達に負担をかけない相続を実現できます。
当事務所の「相続リスク診断」では、あなたの財産状況や家族構成を詳しく分析し、最適な相続対策をご提案します。親の相続経験を無駄にせず、次世代への円滑な財産承継を一緒に考えていきましょう。
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