親の介護が始まると、多くの方が「将来の相続はどうなるの?」という不安を抱えます。特に40代の方は、自分の子どもの教育費もかかる中で、親の介護費用の負担も重なり、経済的な心配が尽きません。
今回も架空の法律相談を中心にこの問題にフォーカスしてみます。
この記事のポイント
- 介護の負担が将来の相続にどう影響するかがわかる
- 親の認知症が進む前に確認すべき重要事項を把握できる
- 「寄与分」という制度を理解できる
親の介護と相続準備で悩む40代からの相談
相談者 40代 女性 会社員
弁護士: ご相談にお越しいただきありがとうございます。
どのようなことでお困りでしょうか?
相談者: 父が要介護認定を受けて、これから介護が始まる予定です。母はすでに5年前に亡くなっており、父は一人暮らしをしています。
介護のことを考えると、将来の相続についても心配になってきました。
弁護士: それは、大変ですね。ご家族構成を教えていただけますか?
相談者: 私と兄の2人兄妹です。兄は遠方に住んでいて仕事が忙しく、私が父の面倒を見ることになりそうです。ただ私にも中学生と小学生の子どもがいて、教育費もかかる時期なので、不安です。
弁護士: なるほど。お父様の財産状況はいかがですか?
相談者: 実家の不動産と預貯金があります。
実家はかなり古い家で、立地もそれほど良くないので、売れるかどうかも分からない状況です。預貯金は父の年金と合わせて、当面の介護費用は賄えそうですが、長期間になると足りなくなるかもしれません。
介護の負担と相続への影響
弁護士: 介護の負担について、お兄様とはお話しされていますか?
相談者: 一度話したことがありますが、「妹が近くにいるから任せる」という感じで、具体的に何をしてくれるかは曖昧なままです。
私としては、介護の手間だけでなく、お金も多く負担することになりそうで不安です。
弁護士: その心配はごもっともです。親の介護を誰がどのように負担するかは、後の相続に大きく影響する重要な問題です。
まず知っておいていただきたいのは「寄与分」という制度があることです。
相談者: 寄与分というのは、どのような制度ですか?
弁護士: 寄与分とは、相続人がお父様の財産の維持や増加に特別な貢献をした場合、その貢献分を相続の際に考慮する制度です。
ただ、介護や看護をしたからと言って、それだけで相続分で考慮されるとは限りません。
相談者: そうなんですか?
弁護士: 例えば、仕事を辞め、対価ももらわないまま、長期間にわたって介護を行った場合や、本来であれば外部のサービスを利用する必要があった介護を家族が行うことで、財産の減少を防いだ場合などに「特別の寄与」が認められると考えられています。
しかし、実際の相続の場面ではそもそも寄与分が認められるかどうかから相続人間でもめることが多いのが現実です。
相談者:そうなんですね・・・
弁護士:お金をもらいたいから介護をするわけではないと思いますが、実際に介護の負担について不公平感が生じてしまった場合には、それ自体が相続トラブルのタネにもなります。
使い込みを疑われないために
弁護士:また、お父様の財産から介護費用を支払う際、相続発生後に「使い込み」と疑われるリスクがあります。きちんとお父様の同意を得ること、それを形に残すこと、領収書や記録を残しておくことが重要です。
相談者: 記録を残すということは、具体的にはどのようなことをすればよいのでしょうか?
弁護士: 介護にかかった費用の領収書を保管し、何にいくら使ったかを記録しておくことです。また、お父様からお金を預かる際は、できれば書面で記録を残しておくと安心です。将来の相続手続きの際に、透明性を保つことができます。
相談者:そうなんですね・・・介護は負担しなきゃいけない、そういった記録も残さなければいけないとなると、本当に大変ですね・・・
認知症が進む前に確認すべき重要事項
弁護士: この場合、お父様とよくお話をされることが大事です。
例えば、財産管理契約や任意後見契約を締結しておくことが考えられます。これにより、お父様の財産を管理していることが明確になり、後々のトラブルを防ぐことができます。
相談者: 任意後見契約というのは、どのようなものですか?
弁護士: 任意後見契約とは、お父様の判断能力がしっかりしているうちに、将来認知症などで判断能力が不十分になった場合に備えて、あらかじめ後見人を決めておく契約です。これにより、お父様が認知症になっても、適切に財産管理や介護に関する手続きを行うことができます。
相談者: それは安心ですね。
弁護士:その契約の中で報酬を定めておけば、管理の対価として一定の金額をもらうことができます。
相談者:それだと私の負担も少しは軽くなりますね。
弁護士: また、お父様の判断能力がしっかりしているうちに、遺言書の作成を検討されることをお勧めします。お父様として介護をしてくれた子により多くの財産を残したいと思っていれば、それを明記することは可能です。
相談者: 父とそのような話をするのは少し難しいですが、兄との関係も考えると、やはり必要ですね。
弁護士: そうですね。ご家族みんなでしっかりと話し合いをされることが、将来のトラブルを防ぐ最も大切なことです。
当事務所では、そのような話し合いのサポートもさせていただいております。
相談者: ありがとうございます。今日お話を聞いて、早めに対策を始める必要があることがよく分かりました。まずは父と話をして、近いうちにまたご相談に伺いますね。
まとめ
お父さんお母さんが元気であれば、将来のトラブル発生を防ぐためにできることが多々あります。
目の前の仕事、育児、そして介護に追われてしまうと、なかなかそこまで考えが至らなかった、というご相談者も多いのですが、この準備を検討したかどうかで、相続手続きに大きく影響します。
当事務所の「相続リスク診断」では、あなたのご家庭特有の問題を分析し、実現可能な解決策をご提案します。早めの準備で、ご家族の平和と財産を守りましょう。
相続・遺産分割について、初回90分無料相談を実施しております。お気軽にご相談ください!