前回、架空のご相談者との法律相談を見ていただきました。
夫婦間の遺言書だけでは解決できない相続トラブルのタネとは何でしょうか。 早速見ていきましょう。
遺言書の「その先」が見えていない危険
弁護士: お話を伺った限りでは、現在の遺言書には大きな問題があります。まず最も重要な点をお伝えします。
相談者: はい、お聞きします。
弁護士: 現在の遺言書では、最終的にお子さんたちへの財産の分け方について何も定められていません。つまり、最後に残った方が亡くなった時に、長男さんと長女さんの間で遺産分割協議が必要になります。
相談者: 遺産分割協議というのは、話し合いということですね?
弁護士: はい。相続人全員で財産をどう分けるか話し合うことです。
しかし、すでにお子さん同士の関係が良くないとのことですから、この話し合いが円滑に進む可能性は低いと考えられます。
相談者: 二人だけで冷静に話し合いができるかどうか・・・
弁護士: 相続の場面では、今まで表面化していなかった感情的な問題が一気に噴き出すことがよくあります。長年の思いが、財産の分け方に影響することがあります。
相談者: そういえば、長女は「お兄ちゃんばかり期待をかけられて不公平だった」と言うことがありました。
弁護士: そのような感情があると、相続の際に「今度こそ公平に」という気持ちが強くなることがあります。
一方で長男さんの方も、何らかの不満を抱えている可能性があります。
相談者: お互いに思うところがあるのかもしれません。
弁護士: また、ご自宅の不動産についても大きな問題があります。不動産は現金と違って簡単に分割できません。
もし長男さんと長女さんのどちらかが自宅の相続を希望される場合、もう一方の方には代償金、つまり相続分に相当するお金を支払う必要が生じる可能性があります。
相談者: 代償金ですか?
弁護士: 例えば自宅の価値が3000万円で、長女さんが相続した場合、長男さんに1500万円を支払わなければならない可能性があります。しかし、長女さんにそれだけの現金がなかったり、他の遺産でも調整が出来なければ、結局は自宅を売却せざるを得なくなることもあります。
相談者: それは考えていませんでした・・・
弁護士: さらに、ご主人が亡くなった時点で、あなたも亡くなっていた場合には、遺言書は無意味なものになってしまいます。仮に、そうなった場合に書き直そうと思っても認知症などによって遺言書が書き直せない、と言ったことも考えられます。
相談者: 言われてみればそうですね・・・
適切な対策とは
弁護士: これらの問題を解決するためには、遺言書の内容を見直す必要があります。まず、次の相続のことも考えて遺言書の内容を書き直すことです。
相談者: 具体的にはどのように書けばよいのでしょうか?
弁護士: 例えば、ご主人が亡くなった時点で、あなただけでなく、ご長男、ご長女にも何らかの遺産を相続をさせるという内容にしておくことが考えられます。
また予備的な遺言、すなわちご主人が亡くなった時点であなたも亡くなっていた場合のことなどを書いておくことが考えられます。
相談者: なるほど。それなら話し合いをしなくても済みますね。
弁護士: ただし、その場合でも遺留分、つまり法定相続人に最低限保障された相続分の問題は残ります。また、お子さんたちの現在の生活状況や将来の見通しも考慮した上で、最適な分け方を決める必要があります。
相談者:今の遺言書で安心していましたが、実は全然不十分だったんですね。
弁護士: 遺言書を作成されていることは既に大きな一歩です。
ただ、トラブル防止のために弁護士の観点からの見直しが必要です。
お子さんたちの将来の平和を守るためにも、ぜひ一度詳しく診断させていただければと思います。
相談者: はい、ぜひお願いします。子どもたちには仲良くしてもらいたいので、私たちにできることはきちんとしておきたいと思います。
まとめ
今回は、夫婦間の遺言書だけでは不十分なケースをご紹介しました。
遺言書があっても、その内容が不完全であれば、かえって相続トラブルの原因となることもあります。
当事務所の「相続リスク診断」では、現在の対策の問題点を洗い出し、より確実で効果的な相続対策を提案いたします。
早めの準備が家族の平和を守ります。ぜひご相談ください。
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