「遺言書を書いたから大丈夫」
と安心している方は多いのではないでしょうか。
しかし遺言書を作成しただけでは、実は十分な相続対策とは言えないケースがあります。特に夫婦でお互いに「全財産を配偶者に相続させる」という内容の遺言書を作成している場合、思わぬ落とし穴が待っている可能性があります。
当事務所の「相続リスク診断」は、問題が起こる前に潜在的な危険を見つけて対策する予防サービスです。病気の早期発見と同じで、早めの対策がご家族の平和を守ります。
今回も架空のご相談者からの法律相談をベースに、遺言書作成後に潜む相続リスクをご紹介します。
ぜひご自身の状況と比べてみてください。
見えない相続の危険を見つける相続リスク診断
相談者 67歳 女性
弁護士: 本日はご相談いただきありがとうございます。お電話では相続について対策をされているとお話されていましたが、何かご心配なことがおありでしょうか?
相談者: はい。実は主人と私で、お互いの財産を相手に相続させるという遺言書を作成済みなんです。
でも最近、それだけで本当に大丈夫なのかと不安になってきました。
弁護士: なるほど。遺言書を作成されているのは素晴らしいことですね。
まず、ご家族構成について教えていただけますか?
相談者: 夫と私の二人暮らしで、子どもは長男と長女の二人います。
長男は東京に住んでおり、長女は私たちの近くに住んでいます。
弁護士: ありがとうございます。お子さんたちとの関係はいかがですか?
相談者: 私たちとの関係は良好です。長女はよく顔を見せてくれますし、長男も年に数回は帰省してくれます。ただ…
弁護士: ただ、何でしょうか?
相談者: 実は長男と長女の関係があまり良くないんです。
昔から性格が合わないようで、大人になってからも顔を合わせると言い争いになることが多くて。
弁護士: そうなんですね。
では次に遺言書の内容について、もう少し詳しく教えていただけますか?
相談者: 夫の遺言書には「私に全財産を相続させる」と書いてあり、私の遺言書には「夫に全財産を相続させる」と書いてあります。どちらが先に亡くなっても、残った方がすべて相続するという内容です。
弁護士: その後、最終的に残った方が亡くなった場合についても記載されていますか?
相談者: いえ、そこまでは書いていません。まずはお互いが安心して生活できるようにと思って、夫婦間の相続だけを考えて作成しました。
弁護士: 財産の内容についても教えていただけますか?
相談者: 主人は自宅の土地建物と預貯金、私は預貯金が主なものです。
自宅は購入してから30年以上経ちますが、この辺りは人気のエリアなので、おそらく購入時より価値が上がっていると思います。
弁護士: ご夫婦の遺言書について、お子さんたちには伝えてありますか?
相談者: 遺言書を作ったことは伝えましたが、詳しい内容は話していません。「お父さんとお母さんで、お互いのことを考えて準備しているから安心して」と言ってあります。
弁護士: なるほど。今回ご相談いただいたきっかけは何でしょうか?
相談者: 先日、知人の方が相続でお子さん同士が揉めて大変だったという話を聞きまして。その方のお父さんも遺言書は作ってあったそうなんですが、結局は知人を含めて子どもたちが裁判になってしまったと。
うちも子ども同士の仲が良くないので、同じようなことが起きるのではないかと心配になりました。
弁護士: そのようなきっかけがあったのですね。
実は、お話を伺う限り、現在の遺言書だけでは将来的に大きな問題が発生する可能性があります。
相談者: そうなんですか?
弁護士: はい。いくつかの重要な問題点があります。
この事例ではどこに問題があるでしょうか?
ご夫婦でお互いに財産を相続させる遺言書を作成されている方は多いのではないでしょうか。
しかし、この相談者の方のように、その先のことまで考えていないと、予想外のトラブルが発生する可能性があります。
今回もご相談者が気づいていない複数の相続トラブルのタネが隠されています。
どんな問題点があるか、それに対してどのような対応が必要かについて、次回詳しく見ていきます。