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「とりあえず共有、は危険?」 知っておきたい相続リスク診断⑭

2025年07月07日

前回は架空の法律相談を通じて、相続した不動産を共有するリスクについてみてきました。
今回はトラブルに発展する前に、どのような対応を取るべきか、について見ていきます。

共有不動産のトラブルを防ぐために出来ること

弁護士:いくつか懸念点があります。
例えば共有不動産の管理方法や将来の処分方法について、明確な取り決めがないように思われます。また、仮にあなたが先に亡くなった場合、あなたの持分はお子さんに相続されますが、その場合に新たな問題が生じる可能性もあります。

相談者:そうですね…実は私も漠然とした不安がありました。でも具体的に何をすればいいのか分からなくて…

弁護士:不動産の共有状態には大きく分けて3つの危険があります。まず「意思決定の困難さ」です。共有者全員の合意がないと、売却などの重要な決断ができません。

相談者:弟が売却に同意しなければ、私の希望どおりにはならないということですね。

弁護士:そのとおりです。売却や建替えなどの大きな変更には共有者全員の同意が必要です。仮に弟さんが住み続けたいと主張すれば、任意での売却はできないことになります。

相談者:そうなんですね。

弁護士:理論上は「共有物分割請求」という裁判を起こすことで解決する方法もありますが、これは時間がかかる上、きょうだい関係が完全に壊れる可能性もあります。

相談者:それは避けたいですね・・・

弁護士:次に「将来的な権利関係の複雑化」の問題があります。
例えば、あなたが先に亡くなると、あなたの持分はお子さん2人に相続されます。すると共有者は3人になり、さらに合意形成が難しくなります。

相談者:そうか、私の子どもたちも関わってくるんですね…

弁護士:最後に「使用・管理に関する不公平感」の問題があります。
弟さんだけが住んでいるのに、固定資産税は折半しているとのことですが、本来は弟さんが適切な対価(賃料相当額)を支払うことも検討すべきです。これが長期間続くと不公平感が募り、関係悪化の原因になりがちです。

相談者:たしかに家族にもその点は言われたこともあります。
こんなことなら、遺産分割の時にもっと慎重に考えればよかったです・・・

弁護士:おっしゃるとおりですね。
でも、今から出来ることを一つ一つ考えていきましょう。
例えば「共有物の使用に関する合意書」を作成して、使用条件や管理方法を明確にする方法があります。また弟さんがあなたの持分を買い取る、あるいはあなたが弟さんの持分を買い取るという解決策もあります。

相談者:話し合いで解決できればいいのですが…

弁護士:このような場合は、弁護士が間に入って調整することで、円満な解決が可能になることも多いです。
例えば、まず不動産の正確な評価額を算出し、弟さんとの関係修復の可能性も含めて分析します。そのうえで共有関係の解消のための具体的な方策や、ご自身の相続対策まで、総合的なプランをご提案することも可能です。

相談者:分かりました。今の状態を放置していると、将来的に大きな問題になるかもしれないのですね。まずは不動産の共有問題の解決からお願いしたいです!

まとめ

今回は共有不動産に潜む見えないリスクをご紹介しました。
「今は問題ない」と思われている状況でも、将来的には深刻なトラブルに発展することがあります。

当事務所の「相続リスク診断」では、具体的なリスクや考えられるトラブルを分析し、それを防ぐための対策を提案します。
早めの準備が家族の平和を守ります。ぜひご相談ください。

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