前回は架空の法律相談を通じて、相続人が行方不明や認知症になって話し合いができない場合のリスクについて触れてきました。
今回はどのような不利益が生じるのか、その場合の解決策や今からできる対策を考えていきましょう。
行方不明の相続人がいる場合の重大なリスク
弁護士: ご心配されているとおり、現在の状況には複数の相続リスクが潜んでいます。まず最も深刻な問題は、ご長男が行方不明という点です。
相談者: やはり問題になりますか?
弁護士: はい。相続が発生すると、遺産分割協議、つまり相続人全員で遺産の分け方を決める話し合いが必要になります。
しかし、相続人の一人でも欠けていると、話し合いができません。このままでは、遺産分割協議に基づいた預金の解約も不動産の名義変更も一切できなくなってしまうのです。
相談者: そんなことになるんですか?
不在者財産管理人制度による解決方法
弁護士:相続が開始された場合、弁護士にご依頼いただくと相続人の調査を行うことができます。その結果、住所が判明することもあります。
相談者:そうであればよいんですが・・・見つからない場合はどうすればよいでしょうか?
弁護士:その場合は「不在者財産管理人」という制度を利用することになります。家庭裁判所に申し立てをして、行方不明のご長男の代わりに財産を管理する人を選任してもらうのです。そして、家庭裁判所に不在者財産管理人が遺産分割協議を行うことの許可をもらえば、遺産分割を実施することが可能です。
相談者:そうなんですね!
弁護士:ただし、この手続きには時間がかかります。そもそも方てい裁判所が管理人を選任するのにも数カ月かかってしまいます。また場合によっては、裁判所に財産管理のためのお金を予納を求められることもあります。
相談者: そうなんですね・・・
弁護士: さらに、ご次男の認知症も大きな問題です。
もし相続開始時に判断能力が不十分と診断された場合には遺産分割協議が出来なくなってしまいます。
その場合、法定後見制度を利用することも考えられますが、後見人には必ずしも家族が選ばれるとは限りません。第三者の専門職が選ばれた場合、その専門職の方がご次男の財産を管理し、継続的に報酬が発生します。
相談者:なるほど・・それは兄(次男)の奥さんも嫌がるかもしれませんね。
今すぐできる相続対策と遺言書の重要性
相談者: 想像以上に大変なことになりそうです。
今からできる対策はありますか?
弁護士: やはり一番は、お父様に公正証書遺言を作成していただくことです。
遺言があれば、遺産分割協議を経ずに相続手続を進められます。
特に預貯金や不動産について、誰に何を相続させるか明確に記載しておけば、行方不明の方がいても手続きが可能になります。
相談者: 父はこんなことになるとは思っていないから、遺言に消極的なんでしょうね。
弁護士: そう思います。
ただお父様自身の判断能力が低下する前に対策を講じることが重要です。
もしお父様が認知症になったり、病気などが原因で遺言書を作成する能力を失ってしまったら、遺言自体を作成することもできなくなってしまいます。
相談者: 分かりました。父に遺言作成をお願いするために、具体的にはどのような手順で進めればよいでしょうか?
弁護士: まずお父様に今日のことをお話しいただき、さらにお父様自身と法律相談をする機会を作ることが大事ですね。
その際に、今までお話ししたことを改めて伝えて、遺言を作成するメリット、作成しない場合のデメリットをお話しします。
相談者:なるほど。
弁護士:ご依頼いただいた場合には、こちらでお父様のご希望に沿った遺言書案の作成を行い、公証役場との調整を行います。その上で、作成日にも証人として立ち会うことは可能です。
相談者: そこまで総合的にサポートしていただけるんですね。
安心しました。
弁護士: 相続問題は放置すればするほど解決が困難になります。特に今から対策する場合と、相続開始後に対応する場合には費用も手間も全く異なります。ぜひこの機会に具体的な一歩を踏み出していただければと思います。
相談者:分かりました!まずは父にこのことをお話しして、面談の予定を改めて入れさせていただきますね。
家族の未来を守る相続対策を始めましょう
今回ご紹介したケースのように、推定相続人の中に行方不明者や認知症の方がいる場合、相続手続は想像以上に複雑化します。
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