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相続人が行方不明や認知症で話し合いができない?① ~相続手続が進まない危機を回避する方法~

2025年10月29日

この記事のポイント

  • 相続人の中に行方不明者がいると、遺産分割協議を進めることができない
  • 認知症の相続人がいる場合、成年後見人などの選任が必要になる場合がある
  • 早期の相続リスク診断により、遺産分割手続が進まないという事態を防ぎましょう

相続手続の落とし穴

相談者 60代 女性

弁護士: 本日はご相談にお越しいただきありがとうございます。
相続に関するご心配があるとのことですが、どのような状況でしょうか?

相談者: 実は父のことで相談に来ました。
父は今年で90歳になりまして。まだ元気に一人暮らしをしていますが、そろそろ相続のことを考えないといけないと思いまして。

弁護士: ご家族構成について教えていただけますか?

相談者: 母は10年前に亡くなっています。
父の子は、私を含めて3人いるのですが、実はちょっと複雑な状況でして…
一番上の兄(長男)は20年以上前から連絡が取れなくなっていて、今どこにいるのか全く分からないんです。
2番目の兄は、最近認知症の症状が出始めているようです。

弁護士: 20年以上連絡が取れないお兄様がいらっしゃるんですね。最後に連絡があったのはいつ頃でしょうか?

相談者: 長男は若い頃から自由奔放な性格で、若い時に両親とケンカをして家を出てしまいました。それ以来、両親とも絶縁状態になっています。
住民票を調べようとしたこともあるんですが、どこに住んでいるのかさえ分からなくて。

弁護士: 2番目のお兄さんの、認知症の症状はどの程度でしょうか?

相談者: 去年あたりから同じ話を何度もするようになって、お金の管理も難しくなってきているようです。
でも病院にはまだ行っていないらしくて、正式な診断は受けていません。

財産状況と現在の管理体制

弁護士: お父様の財産はどのような構成でしょうか?

相談者: 父は昔から堅実な人で、実家の土地建物と、あとは預貯金が中心です。実家は地方都市の住宅地にあって、土地だけでも4000万円くらいの価値はあると思います。退職金を大事に残していて、3000万円ほどあるはずです。

弁護士: お父様の財産管理は現在どなたがされていますか?

相談者: 今のところ父が自分で管理していますが、最近は私が通帳の場所を確認したり、大きな支払いの時は付き添ったりしています。

弁護士: 遺言書については何かお話しされたことはありますか?

相談者: 父に何度か遺言を書いたらどうかと勧めたんですが、「まだ早い」「お前たち(私と次男)で仲良く分ければいい」「長男には渡したくない」と言うばかりで。
正直、父が亡くなった時にきちんと相続手続きができるのか不安なんです。弁護士さんにお願いすれば何とかなりますか?

この事例ではどこに問題があるでしょうか?

日本は「超高齢社会」と言われるようになって久しいですが、それに伴い、推定相続人・相続人の方もご高齢になっている事案が多くみられます。
そうなると、先に推定相続人の方が亡くなってしまったり、あるいは病気などで判断能力を失ってしまっている場合もあります。

今回のご相談者の場合、このまま相続が開始になった場合にはどのような問題が起きるのか、それを防ぐにはどのような対応をすればよいのか。
次回詳しく見ていきます。