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遺産分割調停は自分でもできる?弁護士に依頼した方がいい理由とは?①

2025年10月25日

この記事のポイント

  • 遺産分割の話し合いが決裂したときの選択肢とは
  • 相続人同士の対立に潜む複雑な法的問題
  • 調停を自分で行うことのリスクを事例で解説

遺産分割調停は自分でできる?

相談者 60代 女性

弁護士: 本日はご相談いただきありがとうございます。
遺産分割に関するご相談ということですが、詳しい状況をお聞かせいただけますか?

相談者: はい、実は父が3ヶ月前に亡くなりまして、相続のことで悩んでいます。相続人は母と私、それから弟の3人です。遺産分割の話し合いがうまくいかなくて、遺産分割調停を考えているんです。

弁護士: 遺産分割協議が難航しているということですね。
具体的にはどのような点で対立されていますか?

相談者: 弟が父の遺産の大半は自分がもらうべきだと主張していまして。
私としては、母がこれから生活していくためにも、自宅の不動産は母に相続してもらいたいと思っているんです。ただ、母は高齢で判断を私に任せると言っていて、本心がよく分からないんですよね。

弁護士: なるほど。お母様を含めた3人での話し合いは何回くらいされましたか?

相談者: 4回ほど集まりましたが、毎回弟と言い争いになってしまって。
弟は「自分は父の事業を手伝っていたから多くもらう権利がある」と言うんです。でも、父の介護は私がやっていましたし、母の面倒も私が見ています。

複雑な相続問題

弁護士: お父様の遺産はどのようなものがありますか?

相談者: 自宅の土地建物が約3000万円、預貯金が2000万円くらいです。ただ、父が亡くなる前の2年間で、預金から1000万円ほど引き出されていて、その使い道がはっきりしないんです。弟が預貯金を管理していたのですが、
弟は「父のために使った」と言いますが、詳細を教えてくれません。

弁護士: 使途不明金の問題もあるんですね。
ところで、遺産分割調停についてはどの程度ご存知ですか?

相談者: インターネットで調べました。家庭裁判所に申立書を出して、調停委員の方に間に入ってもらうんですよね?
自分でもできそうだと思って、まずは自分で申し立てをしてみて、どうしても無理そうなら弁護士さんにお願いしようかと考えているんです。
費用も抑えたいですし。

弁護士: そう考える方は多いですね。
ただ今お聞きした限りでも、かなり複雑な問題が絡んでいるようです。
弟さんの主張は「寄与分」という法的な論点になりますし、あなたの介護についても同様です。さらに使途不明金の問題もあります。

相談者: 寄与分ですか??
調べている時に特別受益という言葉も見たんですが、それとは違うんですか?

弁護士: 簡単に言うと、寄与分は相続財産の維持や増加に、特別の貢献をした場合にどう処理をするか、特別受益は生前に相続人が財産をもらっている場合にどう処理をするか、という制度です。
これらは法的に全く異なる概念なんです。

相談者:そうなんですね。ちょっと不安になってきました。
私一人でも調停ではできるものなのでしょうか?

弁護士:ではご本人のみで対応する場合のメリット・デメリットと弁護士に依頼をした方がいい場合について、具体的にお話をしますね。

この事例ではどこに問題があるでしょうか?

遺産分割調停を自分で行おうとする方は多くいらっしゃいます。
しかし、実際には最初から弁護士に依頼をしてしまった方がメリットがある場合も多くあります。
次回詳しく見ていきます。