Column

認知症の父のお金が消えている?使途不明金問題とトラブル予防②

2025年09月10日

前回は架空の法律相談を基に、使途不明金問題について取り上げました。
今回はどのような対応をすべきか、どうすれば予防ができたかについてお話をします。

使途不明金問題の解決方法と予防策

弁護士:まずお父さんの生前の判断能力について確認をする必要があります。お父さんは介護保険を利用されていたとのことなので、行政に対して情報開示請求をし、判断能力に関する資料を集める必要があります。

相談者:なるほど。さっそくやってみます。

弁護士: 次に、お兄さんに対して話し合いを求めます。それでも解決しない場合は、家庭裁判所での遺産分割調停の中で争うか、または地方裁判所に民事訴訟を提起して取戻しを求めることになります。

相談者: 話し合いはどのように進めるのですか?

弁護士: まず、お兄さんからお父様の生活にかかった実際の費用を明らかにし、引き出された金額との差額を計算する必要があります。
そのためには医療費の明細、介護用品の領収書、食費や日用品の支出記録などが必要です。

相談者: それらの資料を兄が出してくれない場合はどうすれば良いのでしょうか?

弁護士: 医療機関や介護事業者から費用の明細を取り寄せたり、客観的な資料を集めることも重要です。また金融機関から取引履歴を取り寄せ、その明細を確認すれば、毎月のおおまかな医療費、介護費用は算出可能です。

使途不明金返還請求の進め方

弁護士: 証拠が集まったら、次のステップに進みます。取引履歴や資料から、毎月の生活費や介護費用などを大まかに算出します。
その上で使途が分からない金額については、お兄さんに説明を求めます。

相談者: それでも兄に応じてもらえない場合は?

弁護士: 家庭裁判所での遺産分割調停を申し立て、そこで話し合いをすることが考えられます。使途不明金問題が解決しないと遺産分割ができない場合には、相手も資料を開示する可能性が高まります。それでも解決できない場合には、使途不明金の返還請求訴訟を提起します。

相談者:最終的には裁判を起こせるんですね。

不当利得返還請求訴訟

弁護士: ただ、裁判は訴える側が使途不明金であることを証明する必要があります。そのため、立証が不十分と判断された場合には、請求が認められません。

相談者:そうなんですね。

弁護士:もっとも、裁判所もお金を管理していた側に対しても一定の説明を求めます。その中で、使途不明機であることが明らかになることもあります。

相談者: 分かりました。私としてはこのままでは納得できないので、裁判も見据えて動きたいと思います。ぜひ、力を貸してください。

使途不明金問題を発生させないために

相談者:先生、実は私の夫の両親にも同じような問題が起きるかもしれないと思っていて・・・

弁護士:何か心配な点があるのですか?

相談者:義理の父も最近、認知症が疑われています。
そのため、今後の義父の介護やお金の管理をどうするかで夫と夫の兄で話し合いをしています。今回のような問題が起きないか不安です。

弁護士: このような問題を予防するためには、早期の対策が重要です。
早期に適切な財産管理体制を構築することが大事ですね。

相談者: 具体的にはどのような対策があるのでしょうか?

弁護士: 財産管理契約や任意後見契約を結んでおくことで、財産管理について明確にして置いたり、判断能力が低下した際の後見人を事前に決めておくことも可能です。もし、すでに認知症が進んでしまっているような場合には、法定後見制度の利用をして、裁判所の監督の下で財産を管理することが考えられます。

相談者: なるほど。それらがあれば今回のような問題は起きなかったということですね。

弁護士: はい。透明性のある財産管理ができるため、相続人間での疑念や争いを防ぐことができます。

相談者:分かりました!次の相談の時には、夫も連れてきますので、具体的に聞かせてください。

まとめ

認知症の親と同居する家族による財産管理に伴うトラブルは、超高齢社会における深刻なトラブルの一つです。
立証には困難が伴いますが、適切な証拠収集と専門家のサポートにより解決可能です。

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