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大家さんが気を付ける相続問題とは? 知っておきたい相続リスク診断⑮

2025年07月09日

「不動産は分けられないから相続が大変」そう思っている方も多いのではないでしょうか。

不動産の相続問題は、物件の数や種類によってさらに複雑になることがあります。 当事務所の「相続リスク診断」は、問題が起こる前に潜在的な危険を見つけて対策する予防サービスです。
病気の早期発見と同じで、早めの対策がご家族の平和を守ります。

今回も架空の法律相談をベースに、不動産相続に潜むリスクと対策をご紹介します。
ぜひご自身やご家族の状況と比べてみてください。

見えない相続の危険を見つける相続リスク診断

相談者 60代 男性 

弁護士: 本日はご相談いただき、ありがとうございます。
不動産の相続についてご心配があるとのことですが、まずはご状況を詳しくお聞かせください。

相談者: はい、よろしくお願いします。私は妻と、二人の息子がいます。
長男は東京で会社員をしており、次男は地元で公務員をしています。

弁護士: ありがとうございます。
お持ちの不動産について教えていただけますか?

相談者: 実は不動産がいくつかあるんです。まず今住んでいる自宅があります。それから父から相続した実家が空き家になっています。
あとは駅前にアパートを一棟持っています。

弁護士: なるほど、複数の不動産をお持ちなのですね。
それぞれの価値や状況はいかがですか?

相談者: 自宅は築25年ほどで、まだ住宅ローンが少し残っています。実家は築50年で古くて価値はありませんが、立地が良いので土地の価値はそれなりにあると思います。
アパートは築15年で、今のところ満室で家賃収入があります。

弁護士: 相続についてはご家族と話し合われたことはありますか?

相談者: それとなく話したことはあります。
長男は「不動産のことはよく分からない」と言っていますし、次男は「アパート経営に興味がある」と言っています。妻は「子どもたちで仲良く分けてくれればいい」という感じです。

弁護士: 現在、遺言書は作成されていますか?

相談者: いえ、まだ作っていません。不動産が複数あるので、どう分けたらいいのか分からなくて。それに、アパートは管理が必要ですから、誰に任せるかも悩ましいところです。

弁護士: ご家族の関係は良好でしょうか?

相談者: 基本的には仲が良いと思います。ただ、長男は東京にいるので地元の不動産には関心が薄く、次男の方が積極的に相続のことを考えているようです。

弁護士: 不動産の管理や収益については、どなたが関わっていらっしゃいますか?

相談者: アパートの管理は私がやっています。次男も時々手伝ってくれますが、長男は全く関わっていません。
実家は空き家のままで、たまに様子を見に行く程度です。

弁護士: 相続税についてはお考えになったことはありますか?

相談者: 詳しくは計算していませんが、基礎控除内に収まるかどうか微妙なところだと思います。不動産の評価が思ったより高くなる可能性もあるでしょうし。

弁護士: お話を伺う限り、いくつかの潜在的なリスクが見えてきます。複数の不動産がある相続では、特有の問題が発生しやすいのです。

相談者: やはり問題があるのでしょうか?

弁護士: はい。不動産の種類や立地が異なる場合、評価額に大きな差が生じることがあります。また、収益物件と居住用不動産では相続人の関心も変わってきます。これらが相続トラブルの原因となることが多いのです。

相談者:そうなんですね。詳しく教えてください!

この事例ではどこに問題があるでしょうか?

複数の不動産をお持ちの場合、不動産の性質が異なるとより相続の際の問題は複雑になります。

今回もご相談者が気づいていない複数の相続トラブルのタネが多く隠されています。

次回は、問題点とその対策について詳しく見ていきましょう。