「まさかこんなことになるなんて」
相続のご相談に来られる方が良くおっしゃっていることです。
自分では思ってもなかった人が相続人になることが分かって、トラブルになるケースも増えています。
今回も架空のご相談者からの法律相談をベースに、相続リスクと対策をご紹介します。
ぜひご自身やご家族の状況と比べてみてください。
見えない相続の危険を見つける相続リスク診断
相談者 60代 男性
弁護士: 本日はご相談にお越しいただきありがとうございます。どのようなことでお困りでしょうか?
相談者: 実は母のことで相談に来ました。母は90代で、最近体調も少し不安定なので、相続の準備をしておきたいと思っています。
弁護士: お母様のことを心配されてのご相談なのですね。お母様のお体の状態はいかがですか?
相談者: 年相応に身体機能は衰えていますが、認知症ではなく、会話もしっかりできます。ただ、もしものことを考えて準備をしておきたいんです。
弁護士: ご家族の構成を教えていただけますか?
相談者: 父はすでに他界しています。
私は5人兄弟の末っ子です。上から順に、長兄は20年前に他界しています。次兄は行方不明で、10年以上連絡が取れていません。
長姉と次姉はそれぞれ健在です。
弁護士: なるほど。お亡くなりになったご兄弟のお子さん、つまりあなたの甥や姪はいらっしゃいますか?
相談者: 長兄には子どもが3人います。ただ、長兄が亡くなってから連絡を取ったこともなく、今どこに住んでいるかもわかりません。
弁護士: お母様の財産はどのようなものがありますか?
相談者: 自宅の不動産と預貯金が主です。預貯金額はそれほど多くありませんが、不動産はかなりの価値があると思います。
弁護士: お母様は現在どなたと暮らしていらっしゃいますか?
相談者: 私の家の近くに一人暮らしをしています。私が毎日様子を見に行き、食事の準備や掃除、通院の付き添いなどをしています。
長姉と次姉は遠方に住んでいるため、ほとんど母の面倒は私が見ています。
弁護士: お母様は遺言書などを作成されていますか?
相談者: まだ作成していないと思います。母は「全部きちんと法律どおりに分けなさい」と言っています。
ただ正直なところ、私としては母の介護をしているので、その点は姉も分かってくれるのではないかと思いますが、それは不公平なことでしょうか?
弁護士: 介護は大変ですからね。
ただ今の状況では相続に関していくつかのリスク要因があると思います。
相談者: リスク要因ですか?どのようなことが問題になるのでしょうか?
この事例ではどこに問題があるでしょうか?
この事例では、高齢の母親と複雑な兄弟関係により、相続時に様々な問題が発生する可能性があります。
今回もご相談者が気づいていない複数の相続トラブルのタネが多く隠されています。
次回は、問題点とその対策について詳しく見ていきましょう。