遺産分割に関する紛争についても、多くの案件を取り扱っていますが、最近多いのは相続人の一人が、被相続人の財産を管理していた場合、その管理態様について後から問題となる事案です。
例えば、Aさんという人がいて、その子どもB、Cがいたとします。
Bが同居をしてAさんの介護と財産を管理していたような場合に、Aさんが亡くなったあと、遺産分割手続きの際に、Cさんから「Bさんが勝手に財産を管理していた」、「Bさんの財産管理に不明な点がある(使途不明金がある)」といったことで、争いになってしまうこともあります。
実際には、BさんがAさんのためにきちんと管理していても、領収書などを保存していないことも多く、後から疑われてしまう可能性もあります。
被相続人を自宅で介護したり、また介護が必要でなくても財産を相続人の一人が管理する場合には、「お金の管理をしっかりしておくこと」が、紛争予防の観点からは大切なのではないかと思います。
そのために取れる方法としては以下のようなことが考えられます。
まず、Aさんに判断能力がある場合、Bさんとの間で「財産管理契約」と「任意後見契約」を締結しておくことが考えられます。
次に、Aさんの判断能力が無い場合には、Bさんは成年後見などの開始を求めて、家庭裁判所に審判の申し立てを行うことが考えられます。その際には、Bさんが自分を成年後見人の候補者とし、裁判所に認められれば成年後見人に就任することができます(成年後見人にどのような人を選ぶかは、裁判所の判断事項なので、希望どおりに行かない場合もあります)。
このように、BさんがAさんの財産を管理することに、きちんとした権限を持ち、また後から分かるような形で管理をしておくことで、相続の際に無用なトラブルを回避することも可能です。
また、財産の管理を行うBさんからしてみれば、第三者に権限の所在を明らかにすることもできますし、Aさんに対して報酬も請求することができます。
今後、高齢者の方を、自宅で介護する場面が増える可能性も高いことから、相続の場面での無用な紛争を避けるため後見制度を利用することも検討されてみてはいかがでしょうか。